SNSで拡散されている「いじめ動画」は、教育現場の枠を超えた重大な刑事事件です。 これらを「子供の悪ふざけ」として片付けることは、現在の法体系では不可能です。
「いじめ動画」に潜むガチな法的リスクと、加害者、撮影者、そして拡散者、関わった人全員が背負う「罪」についてまとめました。
1. 加害者の罪:いじめではなく「傷害・殺人未遂」の領域
倒れた人間の顔面を蹴る、武器(モップの柄等)を使用するといった行為は、刑法における重罪に該当します。
適用される主な法律と罰則
| 罪名 | 根拠法 | 内容と罰則 |
| 傷害罪 | 刑法204条 | 殴打等でケガをさせた場合。15年以下の懲役または50万円以下の罰金。 |
| 暴行罪 | 刑法208条 | ケガに至らなくとも暴力を振るった場合。2年以下の懲役または30万円以下の罰金。 |
| 凶器準備集合罪 | 刑法208条の2 | 複数人が武器を持って集まった場合。2年以下の懲役または30万円以下の罰金。 |
【判例の視点】 過去の判例では、無防備な相手への顔面攻撃は、最悪の場合「殺意」があったとみなされ、殺人未遂罪が検討されることもあります。頭部への打撃は、一撃で脳挫傷や失明など一生残る後遺症を招くため、裁判所も極めて厳しく判断します。
2. 逮捕後の現実:最長「2ヶ月」の拘束
「未成年だからすぐ帰れる」というのは大きな誤解です。特に証拠(動画)がネットに残っている場合、隠滅を防ぐために拘束期間は長引きます。
- 警察での拘束(最大23日間) 逮捕から48時間の取調べ後、検察・裁判所の手続きを経て「勾留」が決まれば、最大23日間は留置場から出られません。スマホは没収、学校にも行けず、この時点で退学勧告を受けるケースがほとんどです。
- 少年鑑別所(約4週間) 警察の拘束後、多くのケースで「観護措置」が取られ、少年鑑別所へ送られます。ここで約1ヶ月間、性格や生活環境の調査を受けます。
- 合計拘束期間 逮捕から審判まで、合計で約2ヶ月間は社会から隔離されます。
3. 被害者の損害と一生続く賠償責任
被害者が受ける苦痛は、身体的な傷だけではありません。PTSD(心的外傷後ストレス障害)や対人恐怖症など、精神的な後遺症は一生続くことがあります。
- 民事賠償(民法709条) 加害者(およびその保護者)は、治療費、慰謝料、将来の逸失利益(ケガがなければ得られたはずの収入)を支払う義務があります。
- 賠償額の現実 後遺症が残った場合、賠償額は数千万円にのぼることもあります。未成年の時に犯した罪であっても、支払い義務は成人後も続き、給料の差し押さえなどの対象になります。
4. 撮影者・拡散者・「特定班」の法的リスク
直接手を下していなくても、動画に関わった全員が法的な責任を問われます。
- 撮影者・傍観者: はやし立てたり、逃げ場を塞いだりして撮影していた場合、**「傷害罪の共犯」または「幇助(ほうじょ)罪」**に問われます。
- 拡散者(リポスト等): 最高裁の判断(2020年等)により、**「リポストしただけでも名誉毀損」**が成立し、賠償責任が生じることが確定しています。
- 特定班(ネット私刑): 加害者の実名や住所を晒す行為はプライバシー侵害です。また、学校や家族の職場へ執拗に電話する行為は、威力業務妨害罪として逮捕の対象になります。
5. 暴力のエンタメ化と「異常性」の指摘
格闘技コンテンツ(ブレイキングダウン等)の影響で、ダウンした相手への攻撃を「パフォーマンス」と勘違いしている風潮がありますが、ルールとレフェリーが存在しない場での暴力は、単なる一方的な蹂躙です。
医学的・倫理的に見て、「倒れた人間の顔面を蹴る」という行為は、相手の命を奪うことを厭わない異常な行動として定義されます。法はこれを「教育的配慮が必要な少年期の一時的な過ち」とは見なさず、社会から隔離すべき危険な犯罪として処理する方向に厳格化しています。
まとめ:デジタルタトゥーとしての重荷
一度拡散された動画は消えません。それは被害者の苦痛を永続させるだけでなく、加害者にとっても「一生消えない犯罪の証拠(デジタルタトゥー)」となります。
現在のSNS社会において、暴力動画の撮影・投稿・拡散は、関係した全員の人生を破滅させる「社会的自殺行為」であると認識すべきです。
by Gemini

コメント